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「民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実」 ポール・コリアー 甘糟智子訳 日経BP社 2010年1月
< アカウンタビリティーと民族国家としての意識がいかに進化するのかをこうして素描すると、最底辺の10億人の国々が抱える基本的な政治的諸問題の説明が得られる。最底辺の一〇億人の国々は行き詰っている。国家として機能していない。ひとつには国家を機能させることが指導者たちの利益ではないからであり、さらに共有されるアイデンティティーの欠如により。公共財の供給も不足しているからだ。ヨーロッパにおける有効な国家の形成の類推に基づけば、これを解決する方法は国家同士の軍事競争の拡大だろう。諸国家が相互に不安を感じるほど、税を引き上げる必要が生まれ、それによってアカウンタビリティーの拡大が引き起こされるという筋書きだ。それによってまた強力な民族国家アイデンティティーも生まれるだろう。>(240P・ただしこの後「私はこの解決法は容認できないといううことを論じようとしているのだが――」と続く。) 一応経済に分類したけれど、どちらかというと政治色が強いような気もする。 著者のポール・コリアーはオックスフォード大学教授で、同大アフリカ経済研究センター所長。研究テーマは低所得国のガバナンス全般で、開発経済学の世界的権威、だそうである。 原題は「Wars, Guns, and Votes Democracy in Dangerous Places」で、邦題はかなり煽っていると言える。 邦題は「アフリカ経済」とあり、本文も主にアフリカを中心に話が進むけれど「最貧国の10億人」はアフリカだけではなく、これは「民主主義を導入しようとしたけれどもどうにもうまくいかず、民主主義の導入が却って経済成長を阻害どころか経済の破壊につながってしまっている国」全般の問題である。 同時に、政権の樹立について、普通選挙、クーデターによる軍事政権、その後の独裁制ないし任期制の順守、選挙の公正さなどなどについて多くのケースを考察している。 民主主義が機能する前段階であれば、有能な独裁者が有効に機能する場合もある、クーデターが無能な独裁者を廃するために機能することもある、選挙で不正がまかり通れば民主主義への希望もなくなる。 選挙をしたら民主主義になるわけではなくて、民主主義を機能させるためには、必要不可欠な要素がたくさんある。ではその要素を育てるためにはどうしたらいいだろうか、ということ。 ややこしい話はいろいあるのだけど、腑に落ちる所のあった点を。 著者は「国家」と訳されている言葉について、3つに使い分けている。 ・nation(民族国家) ・country(土地で区切った国) ・state(政治組織としての国家) アフリカで政情が安定していない国家を例にとれば、 countryであるけれど、その中に複数の民族(nation)が対立しており、state(ひとつのまとまった国家)としては機能していない状態だと言える。 ではどうすればいいかというと、「民族ごとの独立」と「国家としての意識の形成」が考えられる。 民族自決を優先し、それぞれの民族が「国家」を形成しようとするには人口が少なく、ひとつの経済圏を為し得ず、公共財(生活インフラなど)の建設コストも、安全保障コストも跳ね上がり、さらに基材成長を阻害することになる。さらに土地を再分割をすることになるので、近隣の民族との紛争も起こりうる。 国家としての意識の形成については、国民のアイデンティティーとして、各民族よりも上位概念として「○○国民」という意識を形成し直す必要があり、このためにはある程度強力な権力と組織だった政府が必要となる。しかもそれが特定民族からの押しつけになった場合は、多民族からの反発は必至となる。 その中で、クーデターは有意義なのか、経済だけでつながれるものなのか、軍事対立は国家のアイデンティテイを作るのか、「国家<<<民族」の意識の中で公正な選挙は可能なのか、国際社会はどのように援助するべきか、国連が派遣する治安維持部隊は効果があったのだろうか、ということが延々と論じられている。 ということを踏まえて考えてみた。 例えば、インドネシアは多くの島で構成されるため、土地も民族も分断された多民族国家であるけれど、割となんとかなっていた。しかし、地元に天然資源を持つゆえに東ティモールはその中でも独立することができた。 欧州は小さな国家に分断されており、民族をそれなりに分かれている。しかしEUというstateを形成できるのは、各民族、各国家の更に上のアイデンティティーとして「キリスト教」が存在しているからと言える。だからイスラム国家のトルコはEUへの加入が拒否される。 移民国家であり、多種多様な民族で構成される米国も、その建国初期の移民が国を追われた新教徒であったように「キリスト教」があると言える。一応自由の国ではあるけれど、少なくとも「出身国<<米国」は必至である。 で、色々と各国に広がっている移民のなかで特に問題となっているケースは概ね、 「出身国・民族>>>>>>>>>>>現在居住している国への帰属意識」 であったり 「自分の宗教>>>>>>>>>>>>現在居住している国のベースになっている宗教や思想」 であったりするので、 既にstateとして機能している国の中に、新たにnationを持ち込こみ、権利を主張しているのだから揉めない方がおかしいだろうという。 第二次世界大戦後、米国が関与して民主化を進めた国で、まともに成功したのは日本だけだというような言い方をされることがある。 日本の場合 ・島国で、国民と土地のつながりが深い。国土が少なくとも人が多く住んでいる場所では明確。 ・ほぼ単一民族であり人口も多い。(少数民族がいないとは言わないが、独自の経済圏を形成できる人口ではない) ・もともと中央集権的な政治システムが出来ている。 ・もともと教育レベルが高い。 ・(少なくとも終戦直後においての)天皇の求心力。(宗教的・民族的アイデンティティーの一致) ・事実上の一党独裁(短期間で選挙を繰り返しても、政党の頭がすげ変わるだけで政治体制は変わらないので、比較的政権は安定) ・日米同盟と憲法9条による安全保障丸投げ(自衛隊はあるけど、軍備の研究開発から全部自前でやる可能性を考えると、かなりコストは押さえられているはず) という、成功の条件をもとから満たしていると言える。 既に生活インフラ出来上がってるからいいけど、もしも黒部ダム建設中や東海道新幹線建設中に政権交代で工事は白紙撤回!なんてことがあったらそれは経済成長の阻害要因にしかならなかっただろうし、関東人と関西人が別な言語をしゃべり、別な宗教を信じる人たちだったら、首都機能をどこに置くかで揉めただろうし。 ただし、日本はあくまでもnationの段階を超えていないので、民族主義国家における民主主義の成功モデルなのだろうという気がする。民族を超えたアイデンティティーの形成には至らなかったし、そもそも必要なかった。これから先移民を受け入れるなら考えないといけないだろうけども。 ただ、他の国(特に民族紛争を抱える国)に日本と同じことを押しつけても、そりゃ成功しそうにない。 アフリカにとどまらず、国家の形成と発展という点について、色々と考える所の多い本だった。 ちなみに、最底辺の10億人の国は以下。 アフガニスタン アンゴラ アゼルバイジャン ベニン ブータン ボリビア ブルキナファソ ブルンジ カンボジア 中央アフリカ共和国 チャド コモロ コンゴ民主共和国(旧ザイール) コンゴ共和国 コートジボワール ジブチ 赤道ギニア エリトリア エチオピア ガンビア ガーナ ギニア ギニアビサウ ガイアナ ハイチ カザフスタン ケニア 朝鮮民主主義人民共和国 キルギス共和国 ラオス人民民主共和国 レソト リベリア マダガスカル マラウイ マリ モーリタニア モルドバ モンゴル モザンビーク ミャンマー ネパール ニジェール ナイジェリア ルワンダ セネガル シエラレオネ ソマリア スーダン タジキスタン タンザニア トーゴ トルクメニスタン ウガンダ ウズベキスタン イエメン ザンビア ジンバブエ
by yuki-hondana
| 2010-03-22 16:29
| 経済・ビジネス
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